ついにはなびく青柳の

謡曲船弁慶」のフレーズにある、’ついにはなびく青柳の’。15年待っても青柳はなびかなかった。青柳と思っていたのは、真っすぐに伸びた杉だった。その杉があるときはげしい落雷であっけなく折れ焦げてしまった。それを目の当りにしたのだから、しばらくは虚無感が支配し、そしてしだいに自分の思いこみや諦めの悪さにあきれ果ててしまった。人生何が起こるかわからないとはよく言ったものだ。正しく小説顔負けの経験をしたと、諸手続きを依頼した司法書士も驚いていた。他にも自分だけが特別だと思っている人が案外多いなら、これすら平均的な経験かもしれない。これからの終活途中にも何が起こるかわからないと思うと、消化試合なんどと思わず、日々精一杯あがこうと思っている。悪いことは起きたときに心配すればよいのだと、近頃は割り切りができるようになった。今度こそほんとの青柳に期待したい。この思い、今だ人に詳しく説明できないでいるのは、まだ虚無感が整理できていない、のだと思う。

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(昭和の遺物、ウオークインクローゼットに収まっています。そのように

設計してもらって、はや22年。青柳でも杉でもありません。)