蝉みんみん

「蝉みんみん、蝉みんみん、人が来たよ、シャー、シャー」妹のように接していたら、この寸劇をみせてくれた。毎年夏休みに女子大との合宿があって、思わず吹き出したものだった。何一つ不自由なく育ったであろう二人だからさまになたのだろう。それを中年の課長がやったらおそらくみんな引くだろう、滑るということになったに違いない。幸いそれはなかったが、かなり追い詰められていたことは確かだった。場所取りに抜かりがあって、折角の靖国神社の境内で桜の木から離れたところで酒宴がはじまった。よせばいいのに幹事が寸劇をはじめた。二三人がそれに続いた。ひょっとして指名でもされたらどうしよう。手持ちの寸劇なんて縁がない。拒み続けると今後気まずくなるのも困る。そこでいよいよの時になれば、これやるか、と思いきや寸劇のセッションは終わってしまった。やってたらどんな感じになっていただろうかと、考えるのもこわい。もう一度昔に帰って、素直に蝉みんみんをながめてみたいものだ。

(蝉ではありませんが、ガレージの壁にやってきました。)