うまくごまかされよう

謡・仕舞の師匠からいわれているのは、失敗やミスをしても堂々としていること、そうすると観客はそれに気づかない。堂々とミスしてごまかせというのだ。例えば絶句や間違い箇所を繰り返したり、所作や立ち位置を間違えたとき慌てて修正するのは愚の骨頂。間違いとすぐわかってしまう。舞台はみんなでカバーしながらなりたつので、その気持ちをもって一生懸命やって、失敗しても誰かのカバーがあったり、自身で堂々とのりきることが重要なのだ。真摯に稽古を続けても失敗やミスはある、素人は特に。それがその人の実力なのだから、それを誰が攻められようか。観客の方は観客の方でうまくごまかされて楽しむもと。深く考えないこと。重箱の隅を突っついてあらさがしをしても楽しいこと、得なことは何もないのだから。そしてさらに私は思うのです。素人の場合、よく見せようとしても実際は見せられない、そのギャップが嫌味やダサいものになると。プロだと自分を見せようと多少こだわることがあるようですが、それはプロゆえのことであり、素人は素直に真摯な素性が伝わるように演技するのが一番だと。観て聴いてすがすがしさを感じてもらえると信じています。

(よく見せようとする必要はありません。素直がだいじですよ。この花のように)