私のvest史

細身で朱色と緑と黄緑の三色で編んだニットのベストが好きで、いつどこにでも着ていた。祖母のお通夜では流石に姉からたしなめられた。あの頃の学生だからこそと思えるベスト、いつの間にか消息不明になった。就職したころはスリーピースのスーツが全盛で、カジノのボーイさんのようなチョッキを会社で見かけても自分で来ても違和感がなかった。そして私服でいるときは青春のグレーのごま塩ベスト。周りの受けは上々だった。それとは知らず大阪の実家で母がベストを手編みしてくれた。長かった独身時代の終わりのころだった。今でも愛用している。何といっても暖かい。難点は色が明るめのグリーンで安もんっぽく見える。だから家着、それもインナーとして密かに来ている。そして30年、青春のごま塩の後継は出張先の小倉でデパートでかったやつ。店員さんから少し色抜きをしているのでお洒落ですよと言われ衝動買いしてしまった。自分としては高額だった。おそらく母の手編みとこのベストが私をみとってくれるのだろう。年金生活になってからは、消耗品の肌着類以外は購入禁止にして、すでにあるものの活用でしのいでいる。でもこれ結構たのしい。コストはすでに償却済みだからコスパのパだけで心配ない。懐かしい衣類を眺めながら、こいつはもう一度着てやるか、おそらく着ないけど捨ててもいいと思えるまで待ってみようかとか。いろいろ思いを巡らすのは旅をするのに似ていて味がある。あの時こんなのと思って衝動買いしてほどんど着なかったのを今ならこうやってと、たぐいはいくつもある。終活期間中少しずつ衣類は整理しよう。残されたものに遺品整理が負担にならないように。

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(説明は本文をご参照あれ。)