ディナージャケット

5thアベニューのデパートで黒の蝶ネクタイ、カマーバンドとカフス、それに立ち襟シャツを選んで、支払いの為にカードを出した。その時です。傍にいたご婦人が割引クーポンをくれるというのです。売り場の男性は不愉快そうなリアクションだったが、ご婦人はさも当然よと毅然とした視線を返した。ラッキーは言うまでもないが、ハリウッド映画の中にいるみたいで、その日はそれで満たされた。ディナージャケットは客船旅行のレガシーとして持っていたが、そのおかげで、順位の低い自分にフォーマルパーティー出席のチャンスがやってきた。だだ、ブラックタイとのことで、小物をそろえる必要があったのだ。パーティー当日はVIP控室に案内され、日頃お付き合いのあった方の計らいでその方のグローバル組織のトップと名刺交換をした。アカデミー主演男優賞級のオーラに接してその日はそれで満たされた。ところで会場の大ホールはマンハッタンの中ほどにある有名ホテル、その建物に面する路上にはいつも豆菓子のストリートベンダーがいるので、愛用していた。ピーナッツが標準ですが、少しお高いアーモンドがお勧めです。年末にグランドゼロを見に行く予定なのでアーモンドを楽しみにしている。今はいくらかな。パーティーの後、ピアノバーに流れたのですが、ディナージャケットとエナメルの靴、トレンチコートのコーデをみて、ママがオッシャレーって、想定外の歓迎を受けた。どうもそのころは本当にかっこよかったらしい。妻の友達も一日貸してほしいといってたらしい。ほとんど冗談でしょうが全くの作り話でもなさそうでした。一時帰国のタイミングで出演したお宅拝見番組の放映直後、本社の女子社員から、とてもオシャレでしたよとメールが届いたりしました。単身赴任したマンハッタンで暮らすと意識せずともおシャレに映るようです。その証拠に東京勤務になって間もなくダサいオジンになってしまった。生活環境とは恐ろしいものだと思い知らされた。もう一度その輝きを取り戻すためには、しばらくニューヨークに暮らすしかないのでしょうか?

f:id:toyotac:20190412171922j:plain

f:id:toyotac:20190412172010j:plain

(マンハッタンで衝動買いして、いまでも愛用しています。コースターも)