お宅拝見

独りクリスマスを逃れるために、毎年その少し手前から一時帰国していたが、あの年は特別。玄関ドアを開けたその刹那、テレビ局のカメラが待ち受けていた。初テレビは中学2年、当時は生放送でした。まだ録画デッキも普及していなかった。合唱コンクール成績優秀校のいわばエキジビション。コンクールのメンバーには選ばれなかったが、テレビには全員で出演。ところが最前列にいたのでインタビューまでされた。緊張で声が出たか心配だったが親戚の人は何とか聞き取れたと言ってくれた。あれから35年。今回は単身赴任を終えて帰国するシナリオ。普通のお宅拝見番組と違って、ストーリーがあったのです。照明がまぶしくて時差ボケの眠気など感じる余裕もなかった。三日間の撮影でも採用されたのはわずか10分間。実名で会社の名前も出たので、放映翌日は社内と業界で一躍有名人になった。そうだが、その日はすでに赴任地に戻っていて、現地の上司にからかわれた程度だった。テレビ局が安全を考えて一時帰国ではなく転勤の筋書きにしてくれた。人には言わない言えない隠れ目立ちたがり屋としてはちょっぴり惜しい寂しい思いがあったのですが。一時間番組で他の5軒は見るからに豪邸、なんでこの中に我が家がと思ったが、どうやらテレビ受けしたようです。その後も他局のワイドショーを含め3局でも登場。二時間ドラマや映画の撮影も来た。ロケ弁を俳優さんとご一緒したことも。その日はたまたま自分の誕生日。終わったら家族で外食の予定だった。リビングのバーカウンターの後ろに花束を発見。そこまで気を使ってくれるのかと思いきや、主演女優さんのアップだとわかって、いまさらながら自分のおめでたさに笑ってしまった。さらにその日は撮影が長引き深夜になったので、バースデーディナーが24時間営業のファミレスに。でもまあ廊下でその女優さんに’ご主人ですか?’と声をかけられたこともあり。気が付けばそのあと数日は頭がすっきりしていた。後付けながら評価は中の上にまで。ストレス解消には非日常体験が一番です。

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(上:この空間に撮影スタッフが待ち受けていました。下:ここでの撮影はカットされました。)