落ち着け、落ち着け

20年ほど前に会社のエレベーターで閉じ込められたことがあった。異常な速度で数階分上下を繰り返す状態に。1,2名の同乗者はすでにパニクッた言葉を発し始めている。その時、’落ち着け、落ち着け’と自分に言い聞かせ、冷静になろうと努めた。これで人生何度目の’落ち着け落ち着け’なのか。日本の技術を信じていたし、少し揺れの激しい地震でも、そのうち収まっていた経験のためか、きっと間もなく解決するとの期待が先行していた。まじにやばいと思ったのは、ニューヨークのマンハッタンにあった金融現法の勤務になってまもなくのころ。日本円で約二億、速やかに決済すべしとスイスの金融機関からE-mailが入った時だった。前任者が北米勤務を続けていたので、電話でアドバイスを求めたところ、支払うしかないのじゃないのと、いともあっさりしていた。金額が金額だけに軽率にそんなことしたらだだでは済まない。’落ち着け、落ち着け’。金融商品は基本ヘッジしていると本社で教えられていたので、間違いではと思ったが、放ってはおけない。かっこ悪いけどなりふり構わす、いや恥を忍んで邦銀の担当者に頭を下げた。半日待った。ようやく間違いであったことが判明した。もし二億払っていたらと思うと、二度目の血が引いた。同僚にその話をしたら、良く留まったね、偉いじゃないかと褒められた。なぜか目が潤んでる自分。あとでじっくり褒めた。よかった。’落ち着け落ち着け’が救ってくれた。苦い経験のお陰だ。二十代後半のジョブローテーションで貨物船のオペレーションを任されて間もなくだった。船混みの激しいアフリカの港で、一か月も接岸待ちの船の船員が急性虫垂炎になって、手術を要するとの連絡があった。船長は直ちに順番待ちを放棄してでも日本人医師のいる港に向かいたいと。本社の船員仲間はそれしかないとの意見で纏まって私を取り囲んだ。ところが、今ならパワハラ上司がそんなことで一か月棒に振るのか。日本人でなくてもその港にも信頼できる医者はいるはずと言って譲らなかった。この時の自分はおどされて焦ってたので、出航やむなしと安易に結論していた。きっとあの時の上司。ビビらず’落ち着け落ち着け’と最善の方法を探っていたに違いない。ところで、この邦銀の救いの神をお礼の夕食に招待した。当時ニューヨークではやり始めていたアップルティーニで乾杯。二つ隣のテーブルにもアップルティーニがあった。

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(珍しい形なので衝動買いしました。新入社員で配属先の先輩からもらったレースのコースターと羽がにているので敷いてみましたが。)