フットパス

駅からチップ込みで2ポンドの基本料金内の距離。それを毎朝10分フットパスを歩いて通勤していた。30年前に住んだロンドン郊外、息子に勧められてやってきた。ネットで下調べをしたので迷わなかったが景色の全部は思い出せなかった。さすがにフットパス発祥の地英国だけあって、標識もしっかりしている。ついでに我が家の先、フットパスの続きを歩いて草原のような広大な公園にも行ってきた。少し向こうの右手片隅に遊園地の乗り物のような黄色いペイントが目に入った。決まった日だけ営業する遊園地、カーニバルと言っていたかも。変わったのはトラムが走っていること。当時廃線跡だと眺めたことがあったがそれを利用しているらしい。駅に引っ返す途中で二人ずれのおまわりさんに出会った。怪しまれまいと、こっちから先にハローと声をかけた。30年ほど前この辺りに住んでいた。センチメンタルジャーニーだと言ったら、”エンジョイ”だって。人を見る目があるようだ。出勤前の若い担任の先生と学校の入り口の少し手前で何度か出会った。笑顔を交わしたのはこの辺だったか。学校の向こう側にもやや小ぶりの公園があって、レンガつくりの給水塔とその裾に咲く黄色い大輪のスイセン。でっかいリスが普通にいた。家族4人で散歩したっけ。駅の反対側のいかにもローカルなデパートで日本では珍しい松ぼっくり付きのクリスマスツリーを買った。看板を見つけようとしたが、行きつけなかったか廃業していたか、確かめようがない。駅脇のフードコートで懐かしいフィッシュアンドチップスを昼食にした。当時の通勤電車はドアのノブが外側にしかなく、窓を下に押し下げて開けていた。馬車の名残でしょう。今思えばなかなか風情があったが、当時は英語と日常生活に慣れるのが精いっぱいだった。この三十年、何だったんだろう。いろんなことがあり過ぎて。でもこうして昔を肉眼で振り返ってみるのもいいことなんじゃないのかな。十分贅沢ですよ。息子の言うことは聴こう。

f:id:toyotac:20190628172822j:plain

f:id:toyotac:20190628172849j:plain

(庭のガクアジサイ、食卓にいただきました。)