グラウンドゼロ

まだ温かい煙とほこり、言葉のないにおい。その二週間後グラウンドゼロのすぐそばまで行った。マイレージを貯めてFクラスでやってきた妻と貴重な経験をした。空港からアパートに着いてほどなく、妻が私の方をじっと見つめていた。目が求めている。抱き寄せた。よく来てくれたね。機中では初めてのFクラス体験で気がまぎれていたものの、周りの心配する中、以前から決めていた日程で来てくれた。客観的には一番安全なタイミングだが、主観的には不安があって当然のフライトだった。他に乗客は財界の大物らしき人一名しか目にしなかったようだ。それがやっと無事到着、安堵感に23歳新婚のころの幼さ、初々しい瞳にもどっていた。あれから17年、妻が残してくれたマイレージでFクラスに乗って跡地を確かめに行った。クリスマスシーズンの日曜だったためか、人の多さに驚かされた。敷地内のミュージアムにも長蛇の列、並ぶ気が萎えてしまった。予定変更でそのまま歩いてブルックリン橋に向かった。対岸のあの人気スポットから見えるマンハッタンの眺めにはキングコングが登ったツインタワーはもうありません。惨事の時の感情の高揚はさりげなく、比較的早く消えてゆくもの、そうなのです。単身赴任で住んでいたころのマンハッタンではないのです。月日の経過とはこういうものなんですね。

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(妻の喪が明けたので、若松を飾った。松ぼっくり付きが気に入って

購入。朝六時過ぎでもまだ点灯していました。)