いつかはクラウン

あのCMをやっていたのはいわゆる良き時代だったかと記憶する。原付カブから始まって、カリーナ、チェイサー、ボルボ、ベンツE、ベンツS。気が付いてら’いつかはクラウン’をスルーしていた。実家が狭い路地の突き当たりだったので、とりあえず父親代わりのお兄ちゃんに買ってもらったカブ。乗った記憶がほとんどない。就職後三年目に自分のお金で買ったカリーナ。デザインと値段で折り合いをつけた初期の排ガス規制適合車。馬力不足の上にパワステもなく、とにかく疲れた。今思えばコスパ最悪。それでもズルズルと天板の色が変色するまで乗ったのだ。いろいろな青春の思いでを載せて。そして望まない人事異動を言い訳にやけくそでチェイサーの特別仕様車を購入。初めて買ったラグジュアリー車だった。ところがどっこい、一年も乗らないうちにロンドン転勤となったのだ。英国は右ハンドルで、違うのはラウンドアバウトくらいかと思っていた。帰国した同期から譲りうけたのがボルボ、高級車なのに冷房がない。ロンドンでは住む家もそうだが、よほどの金持ちでもない限り冷房がない。それでも年に数日を除けば快適でした。帰国時に後輩がこころよく時価で買ってくれたが、しばらくして、彼が原因不明の病気で亡くなったと社内報があった。なんとも言えない気分、いい奴だったのに。神様のルールなのでしょうが無情です。ボルボは本来左ハンドルで、英国向けにむりくり右にしてある。ワイパーと方向指示器が逆でブツブツ言っていた妻に帰国後の選択権を取られた。それがベンツ。社宅の駐車場だから顰蹙をかった。それからはバブリー路線となって、思いっきり背伸びのSクラスになっちゃった。NY単身赴任でアメ車に交じってマンハッタンを走る品格のある車。オーナードライバー車としてサイズダウンしたSクラス。内装色のエレガンスに恋をしてしまったのである。黒の外装にオレンジがかったアイボリー。これぞニューヨーカーだ。日本ではこの車の内装のほとんどが黒だったので、最新モデルをドイツから輸送されるまで、半年待った。そして、二年前退職を機にメルセデスベンツ社に引き取ってもらった。16年間ご苦労様、お疲れさまでした。気が付いたらいつかはクラウンではなかった。人生とはわからないものです。

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(ドライバーさんの誕生日にしました)

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(恋したのはもう少し赤みがかった色。でも日本の景色に合う色しかカタログにありませんでした。)