記憶

記憶は常に塗り替えられている。VHSテープじゃなくDVDのように。都合よくも悪くも、塗り替えられて、アップデートされる。記憶しているデータの位置が常に入れ替わっているとすれば、相当なエネルギーを知らないうちに消費している。夢は記憶の塗り替え作業で生じるバクのようなものか。だから支離滅裂なのか。トイレを探す夢は生理現象とのコラボか。深酒した翌日の朝、多少断片的なシーンを除いてその時の行動が思い出せない。急性の記憶喪失。覚えていないのではなく、脳のどこかにあるデータを呼び出せないだけらしい。脳が傷つくと記憶に障害が生じる。DVDの傷や汚れのように。永久に思い出せないこともある。汚れは取り除くことが可能だが、傷はまず修復できない。脳以外の体の損傷は脳で認識できるが、脳の傷みは脳としては認識できない。痛くも痒くもないのだ。だから不気味で始末に悪い。加齢で脳の白質化が進む。生きている細胞がそれを補完してくれているので、当面の実生活には問題はない。最近日常でふとした忘れが多い。人の名前、昨日見たドラマ、夕飯何食べた。石鹸で背中をと思った刹那、シャンプーの後リンスしたっけかと。脳のエクササイズと思ってやっていることがある。脳内毛細管まで血をおくるべく血圧を上げる。超能力で何かを念じるようなイメージで。ほったらかしにせずこまめにためしてみる習慣を持つようにしている。思い出せないことの不快、不甲斐なさ。思い出した時の快感と疲労感。酔った時の記憶はそれごときでは呼び出せない。記憶のモザイクを組み立てることすらできない。いつかは認知症の範疇に。脳医学の先生が読んだら、こんなつぶやきお笑いだろうけれど、テレビCMの小さい注書きのように、個人による差はございます程度に考えてもらえまいか。

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(独身当時、バンクーバーで買った。何を思ってか思い出せない。明後日からバンクーバー経由、オーロラツアーに参加する。フラッシュバックあるかも。)