マッチバック

利便性かデザイン、どっちを選ぶか。ロマン、夢を追うならデザイン。それが今住んでいる分不相応な家。普通のサラリーマンがこんな家に住めるのかと言えば、設計士さん曰く、住むと馴染むのですと。だから当然不便なことが多い。その一つが長い動線、いかに効率良く暮らすか。海上輸送の近代化に貢献したコンテナの最大の難点は、この大きな箱をもとの地域に戻す必要があること。不定期で動かす貨物船の採算を上げるにはバラスト航海、空で走る距離を最小限にすること。ここにマッチバックという言葉がある。目的地で空になったコンテナに荷物を積んで戻ってくる、全く同じ地点でなくとも、近くまで。お金を稼がない二等辺三角形の底辺を短くすること。翻って我が家の動線。台所の流し台やレンジ、収納のカウンターが7メートルある。だから食洗器から取り出した食器を引き出しに収納し、少し引っ返して流しの汚れ物を隣の食洗器にと、こんな具合だ。来月のはじめ親戚の結婚式で大阪に行く。ついでに京都で二泊して付加価値をつける。基本原理は同じかと。退職してそれまで定期券だった毎日の通勤がなくなった。だからお出かけはすべて有料だからマッチバックの精神が重くのしかかる。能のお稽古で神保町に行くときは古本屋、宝くじ売り場、渋谷で降りてDIYものの物色。霞が関でミニ同期会の日はついでに新橋でかの有名最中を買うとか。でもこれって口実作ってるだけや、本末転倒やで。終活で必要な創造的な活動とは違うような、でも開き直れば、気楽に考えれば、これこそが人生か。現役時代会社ではいろんなことを学ぶ。身近な超進化系の例としては、世界の自由競争にいち早くさらされた経験を活かし、婿入りして継いだ会社でそれを活用した風雲児、時代の寵児となった超一流の方もいる。中の上を目指す進化系、自分としては会社で学んだマッチバックを生かしている。先日息子が階段の下にティッシュペーパーの取り出し口を外して置いてあるのを見かけた。二階にある自分の部屋に戻る前にピックして行くつもりなのだろう。親のすることをそれとなく見ているのか、DNAか。いずれにしても、少しおかしい、ちょっとうれしい。

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(上:バーカウンターを照らす照明 下:これに白のカラーの花10っ本さしたら

まるでニューヨークのお店に見えませんか?)