出世魚ブリちゃん

ニューヨークに通い妻。9.11の二週間後東京NY便のFクラスキャビンに居たのは妻と財界の大物の二人だけだったようだ。JFKの出迎えロビーの群衆の中から妻がレッドカーペットを歩いているのを待ち受けるその優越感はちょっとしたものだった。グレーのスーツにキャリーバック。当時全米ヒットチャートに舞い上がったブリちゃんのようにオーラが見えた。赴任後最初に来てくれたときはエコノミー、そして前回はビジネスクラス。一度はFクラスに乗せてやろうとマイルが溜まったタイミングに9.11が勃発した。自粛の声がある中、逆に今が一番安全ではないかとの判断で予定通り来てくれた。でも流石に怖かったのだろう。その日夕方、少し暗くなりかけたアパートの部屋、二人の距離が近くなり、声にならない声で’怖かった’と腕の中で震えていた。目には涙も。まるでドラマのシーンのようだった。出世魚ブリちゃん、可愛かった。今思えばあれが二人のピークだったのかと。つるべ落としのように。ピークは高いほど落下速度が速い。超人気ジェットコースターのように。こんなの誰もが経験できるものではない。味わえるものではない。COVID19のお陰で平凡な日常の大切さを思い知ったが、一方でそれだけで終わるのはつまらない。辛くとも波乱万丈、だけれど自分では選択できない。そんなふうに終活のベリーエンドに振り替える。ってほんとなんですか。

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(今年も咲いてくれました、我が家のアジサイ。)