次子と朝子に教わったこと

軽い友達だったが卒業後物理的に距離が離れてからも時々電話していた。そんなある時一度会わないって次子の方から言った。このままだと気持ちだけが膨らみそうだというのだ。会えばはっきりわかると。いい感じなのかと思いがつのった。会うと自分の気持ちがはっきりする。現実を見る勇気が前に進めてくれる。良くも悪くも。結果、次子は冷めたようだった。自分の方はさびのところで膀胱の臨界が始まった。これが二人の定めなのだ。でもあとでよくよく考えてみるに一人だけ燃え上がっている自分を冷めさせるためにその機会を設けてくれたのだと。年は同じでもお姉さんだったのだ。その後も誕生日には電話していたが、結婚するというはがきが届いてからは途絶えた。次子はもうこの世にはいない。ロンドン在勤のときに旅行に来た知人から夭逝を知った。職場の後輩朝子には、自分がコンプレックスのかたまりだと指摘された。最初何のことかわからなかったが、人事異動で疎遠になってようやく自覚した。そのコンプレックスと言うやつ、いつのころからか軽くなってきた。加齢のせいかもしれない。彼女は三年後輩ながら自分よりはるかにインテリジェンスの高い才女だ。いろいろ学ぶことがあった。ある日なぜか文庫本を貸してくれたのだ。英国の小説の訳本。実に面白かった。眠くならなかった。最後まで読めた。それ以来、読書とは縁がなかった自分が本好きに一転したのだ。28歳、遅すぎる目覚め。まさに師匠なのだ。コンプレックス人間の自分を教育するためか、母性本能からか、いや憐れみ、それとも友情。恋愛感情がないのはわかっていた。学生時代の元カレと結婚して退職した。40年過ぎた今も二人には感謝している。

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(買った値段はわすれたが、箱根に課内旅行した時の写真が残っている。

40年ほど眠っていたがイエローナイフ行きでは重宝した。ジャケットに代えて

このセーターを選択、正解だった。)