Horse riding in Tasmania

なんでタスマニアなの? コロナ前に乗馬レッスンの予約をしたのが、3年後に実行されたのさ。入社二回目の異動でタスマニアン高級ウールをお客だった紡績会社が毎年最高値で落札していることを知った。そのスーツが当時数十万円もしたのだ。あの時の記憶が引っかかって、豪州では自分史上未踏の地を選んだわけさ。なんで乗馬なの? ロンドン在勤の頃仕事にも生活にも慣れてきた三年目、折角ならこの地で乗馬をと、思った矢先の帰国辞令だった。30年の時を経て実現したわけさ。妻が天文学的数字のマイルを遺してくれたおかげで思い切れた。20年前からペーパードライバーなのに、足はどうするのか? 怪我でもしたらどうする? 無事帰国した今更の振り返りである。よく行ったよねと誰もがいいそう。インストラクターはちゃんとレベルまで仕上げてくれたし、足も引き受けてくれたフレンドリーなB&Bのオーナー。満足感の一方のどこかで、例によって終活の課題の一つが終わったのだと人間といういきもののあわれも感じる。旅行ウイッシュリストには韓国時代劇撮影所が残ってるだけである。マイルの残数と期限が迫っている。この古希の自分の思い、いつかまた振り返ることになる。生きていれば。インストラクターに来年もおいで、こんどは海岸方面のツアーに。生きていればね。そのセリフ言うんじゃないとしかられた。うれしいね。

(とにかく田舎だ。B&Bのすぐ近くが真っ白い砂浜。ここから車で30分の山奥に

 スクールがある。カットしたリンゴをあげると上機嫌なサンダー君。

 君もいろいろな経験をして僕を乗せてくれたんだね。)